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熊谷亜莉沙

2020年12月25日(金)・26日(土)/ 2021年1月8日(金)・9日(土)・12日(火)・13日(水) 

 

ギャラリー小柳では、国立新美術館で開催された「シェル美術賞 アーティスト・セレクション2020」にて熊谷亜莉沙が発表した新作7点をご覧いただけるスペシャルビューイングを開催いたします。 こちらの新作に加え、2020年「Photographs」展で発表した写真作品5点も合わせて展示いたします。

 

 

 

自身と他者のバックグラウンドを背景に、富裕と貧困、生と死、愛と憎しみという非合理的で矛盾に満ちた人間のありよう、その表裏一体の感情や姿に焦点を当て制作している。

 

陶器の豹は特に、自他の加害性の象徴として描いた。

 

巨大な夫と結婚した。身体として自分が弱者ということを改めて思い知らされ、嫉妬し憧れた。

気付けば心に燻っていた「男に生まれたかった」という気持ちが「私はお前に生まれたかった」という屈折した気持ちとして蓄積していた。

 

ある晩、夫が悪夢で飛び起き私の首を思わず絞めた。

すぐに夢から覚めて夫は驚き、大きな体を目一杯縮め「きみを殺してしまうかもしれない」とぶるぶる泣いた。

私は「物理的にか弱くとも、あなたの心をこんなにも傷つけることができる」ということに強烈な多幸感を感じ、同時に自身の無意識の暴力性に涙を流す夫を「なんて可憐な人だ」といとしく思った。

 

私は作品を制作している限り、自身の加害性からも逃れられないと感じている。

 

熊谷亜莉沙

 


 

【藪前知子(シェル美術賞審査員) 推薦コメント】

服飾店を家業としていた熊谷亜莉沙の作品には、豪奢なハイ・ファッションの質感と家族の記憶、非日常と日常が奇妙に接続されている。熊谷が描き出すのは、「美しいもの」の解像度を上げた時に現れる棘--禍々しさの領域である。それは、美や愛、幸福といった、私たちの生を取り巻く肯定的な世界が、目まぐるしく推移する消費社会や、性差による力の不均衡など、危うい基盤の上に立つ儚く脆いものであることを暗示する。装飾品である豹を描いた新作は、秘められた攻撃性、支配関係に対する憧れが愛のうちに隠されていること、女性である自らのうちにも否定し難くあることを、印象的なステイトメントとともに示している。その暴力性が、描くという行為とも分かち難く結びついていることに自覚しつつ、熊谷は自らを掻き立てる衝動に、静かに向き合う。

Installation view: photo by Keizo Kioku