HIROSHI SUGIMOTO | OPTICKS

 

2021年3月26日(金)­- 5月1日(土)

12:00–19:00

*日/月/祝日休廊

 

この度、ギャラリー小柳では杉本博司の個展『OPTICKS』を、3月26日(金)から5月1日(土)の会期で開催いたします。本展では、去年京都市京セラ美術館で発表された大判カラー作品「Opticks」シリーズから4点を展示いたします。本シリーズは、アイザック・ニュートンのプリズム実験の再現から始まり、最新技術を駆使し、杉本が15年間かけて完成させたものです。

 

1704年に出版されたニュートンの『光学(OPTICKS)』により、白色だと思われていた太陽光が、プリズムによって赤、橙、黄、緑、青、藍、紫など複数の色から構成されていることが発見されました。杉本は、ニュートンが発明した観測装置を改良し、プリズムを通して分光させた色そのものをポラロイドフィルムで記録しています(*) 色と色の隙間に立ち現れる無限の階調を焼き付けたポラロイドをデジタル技術で大判プリント作品に仕上げています。

杉本は「私は捨象されてしまった色の間でこそ世界を実感することができるような気がするのだ。そして科学的な認知が神を必要としなくなった今、そこからこぼれ落ちる世界を掬い取るのがアートの役割ではないかと思うようになった。私は余命幾ばくもないポラロイドフィルムを使って、この色と色の隙間を撮影してみることにした。」と語っています。モノクロの写真作品で知られる杉本にとって初の試みとなる、「光を絵の具として使った」圧倒的なカラーフィールドを体感ください。

 

*ポラロイド社は2001年、2008年に経営不振により倒産した。その後2017年に債権者が立ち上げたインポッシブル・プロジェクトにより事業は引き継がれたが、本来のポラロイドフィルムは2008年に製造中止された。本展覧会の作品は2009−2010年に最後の在庫フィルムで撮影されたものです。

 

 

Opticks

 

 ニュートンによるプリズム実験の再現を始めてから今年で15年になる。毎年冬になると日の出の位置がプリズムの正面に近づいてくる。冬の冷気を通過してくる光は分光され、薄闇の観測室に導かれ、白漆喰の壁に拡大されて投影される。私はその色の階調の奥深さに圧倒される。光の粒子が見えるような気さえするのだ。そしてその一粒一粒の粒子が微妙に違う色を映している。赤から黄、黄から緑、そして緑から青へと無限の階調を含んで刻々と変化していく。私は色に包まれる。特に色が闇に溶け込む時、その階調は神秘へと溶け込んでいくようだ。

 

私はポラロイドの小さな画面の中にもその微細な粒子が閉じ込められているであろうことに気がついた。数年にわたる実験の結果、私自身が色の中に溶け込むことができるような十分な大きさを持った色画を作ることに成功した。私は光を絵の具として使った新しい絵(ペインティング)を描くことができたように思える。

 

杉本博司

 

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