Michaël Borremans, Taking Turns, 2009-2013
ミヒャエル・ボレマンス 青柳龍太 五十嵐大地 橋本晶子|無音 silence
2025年6月28日(土)- 8月9日(土)
12:00–19:00
*日 / 月 / 祝日休廊
[レセプション:6月28日(土)17:00–19:00]
この度、ギャラリー小柳では2025年6月28日(土)から8月9日(土)の会期で、グループ展「無音 silence」を開催いたします。
「無音(むおん)」とは、音がしないこと、あるいは音が聞こえないことを意味する言葉です。実際には、音が全く発生しない状態というのは、私たちの世界に大気がある限り起こり得ませんが、もしも世界から一切の音が消えたなら、そこにはどんな体験が待っているでしょうか。
本展では、ベルギーの芸術家ミヒャエル・ボレマンスの映像作品《Taking Turns》と、静けさを生み出す作家、青柳龍太、五十嵐大地、橋本晶子の3名の新作を展観いたします。
ボレマンスの映像作品《Taking Turns》は、下肢がない少女が描かれた一連の絵画作品〈Automat〉から派生したもので、2014年にギャラリー小柳で開催した個展以来、日本では11年ぶりの公開です。
青白い灯りのもと、女性が等身大のトルソー(胴体)を抱え、廊下をゆっくりと歩いていますが、そこには彼女の足音も、わずかな息遣いさえも聞こえません。完全無音の世界において、女性が水平な台の上でトルソーを回転させる姿にはどこか緊張感が漂い、厳かな儀式を行っているようにも見えてきます。画面に代わるがわる映し出される女性とトルソーは、いつしかその存在の境界が曖昧になってゆき、見ている私たちはまるで奇妙な夢に迷い込んだような感覚に陥るかもしれません。
青柳龍太《untitiled.2》2024
青柳龍太は、自らの感性で見つけ出し、収集したモノを正方形の限られた空間に精緻に配置するインスタレーション作品を発表します。
青柳にとってアイコニックとも呼べるこの〈SANDPLAY(箱庭療法)〉シリーズでは、異なる時や場所で作られた多種多様なモノたちが、作家曰く「最も相応しく、最も美しさを現す場所」に並べられており、静謐な秩序を持ってそこに存在しています。モノは声を持たずただそこに在るのみで、それぞれが辿ってきた時間や記憶について語られることはありません。しかし、青柳が作り出す世界の中でひとつに調和し、美しさを放っています。
五十嵐大地《Still Life with a Silver Fork and Lambs》2025
五十嵐大地は、静物画を展示します。静物画とは、花や食べ物、器や楽器など、一般的には自ら動くことがない「静かなる物」を描く絵画のジャンルです。五十嵐が選ぶモチーフも、食器や動物の骨など、一見、伝統的な西洋絵画においてよく表されてきた事物のように見えますが、実はモチーフを樹脂などで複製し、緻密なセッティングを行なった後、カメラで撮影。さらには、そうした画像データのコラージュを経て、ようやく描かれます。モチーフはコピーを繰り返す中で姿を変え、元に戻すことはできません。五十嵐の静物画には、不可逆な時間の経過やそれが織りなす事物の変化など、目に見えないものまでもが捉えられているようです。
橋本晶子《Hidden Box Ⅲ / Waves》2025
橋本晶子は、「離れた場所に、今ここで触れる」というテーマに基づき、絵画に描かれた場所と観る者がいる場所を結びつけ、鑑賞者がふたつの世界を行き来する、旅のささやかな道標となるような作品を生み出してきました。《Hidden Box Ⅲ / Waves》では、橋本のルーツにまつわる地域で採れた木材で作った箱の中に、正面から覗くと、寄せては返す波の風景が広がっています。上から覗くと、箱が作り出す影の合間には、橋本の作品にたびたび登場するモチーフの一つである、渡り鳥の影が見えてくるでしょう。もしかすると彼らは「離れた場所」と「ここ」を繋ぐ案内人なのかもしれません。橋本が紡ぎ出す親密な世界に触れ、ふたつの場所の距離が重なり消滅する瞬間を感じてみてください。
展覧会初日6月28日(土)の午後5時から7時までは、青柳、五十嵐、橋本が在廊し、レセプションを開催いたします。午後6時からは3名によるアーティストトークも実施予定です。この機会にぜひご取材いただけますよう、お願い申し上げます。
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